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従来、人間の暮らしに深く関わってきた動物は少なくありません。たとえば「馬」は、移動や輸送に古くから重宝された動物です。それは国や地域を超えてでさえ、自然とそのように用いられていた事実があります。それはその姿形が人を乗せたり荷物を運搬することに向いていたからです。歴史や伝説上に「名馬」といわれる馬たちが数多くいるのも、古くから広く人間の活動に関わってきたからでしょう。

そのように人間に関わってきた動物たちは、今でも私たちのパートナーになっているシーンが多いものです。前述の「馬」もそうですが、時代が変わっても、人の暮らしが変わっても、動物の姿形は変わりません。そして私たちがパートナーとなる動物たちに抱く想いも変わりませんでした。同じこの地球に生きる者同士、使役する、使役されるという関係を通り越した「シンパシー」のようなものがそこにはあります。

「馬」などの大きな動物はなかなか現代では「個人」レベルで飼うわけにはいきません。現代において動物と人間の関係をもっとも実感できるのは家庭における「ペット」とその家族の関係です。ペットとして使役された動物たちに課せられる役割はその家庭やシチュエーションで異なるでしょう。セキュリティの一貫として番犬としてそこに存在する動物や、愛玩動物としてただ飼い主とその家族に寄り添う動物など、その境遇はさまざまでしょう。

ですが、そこに生まれる形容しがたい「人間と動物の間のシンパシー」はどのような状況でも変わりません。それは実感をもってのみわかる類いの感情であり感覚です。一度動物を飼い、その世話をし、そして日常をともに送った方だけが、この感覚を理解できるのです。それは人生体験としてもとても素晴らしいものであり、「言葉」ではなく「本能」で通じるという、理屈では語り尽くせない感覚となります。

「ブリーダー」とは、いってしまえば多くの人にその「素晴らしい体験」を提供するためのプロフェッショナルです。動物を育み、その動物を売買して収益を得ることなのですが、魚介類の養殖や植物の量産などとはまったく違った側面をもつ仕事です。

育てる動物の個体、そのすべてに「個性」があり、その一生があります。その動物の一生はブリーダーではなく、まだ見ぬ「オーナー」のためにあります。そして、その一生はそのオーナーやとりまく環境によって作り上げられ、その個体はオーナーのパートナーとして、そして家族として過ごすことになります。その一生を見届けることはできませんし、それらの個体に名前をつけることもできません。ですが、それらの個体は確実にそれぞれがそれぞれの生活を送り、天寿を全うしていきます。

人と動物の素晴らしい関係をクリエイトする仕事、それがブリーダーです。ただ動物をビジネスの種にするだけではありません。かといって一匹一匹を育て上げるわけでもありません。人と動物が触れ合う、ともに暮らしていく「機会」の提供がその主な指名です。ですが、取り扱っているものが動物であり、「いきもの」なわけですから、それに対する配慮も当然必要ですし、他の職業にはないような悩みもたしかにあります。どのような個体もやがては手放してしまうという寂しさもあります。

ですが、そのような「ブリーダー」がいなければ世の中の人と動物の関係が少し希薄になってしまうのは間違いありません。

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